ピーマン白書のひみつ

「ピーマン白書」は、「3年B組金八先生」が巻き起こした学園ものブームに乗り損ねた伝説のドラマである。

特撮ファンに絶大なカルト人気を誇る岸田森の怪演も虚しく、全く数字が取れずにほんの数回の放映で番組打ち切りになってしまった。私は「帰ってきたウルトラマン」の坂田さんが出るのを楽しみにしていたが、彼が演ずるのは主人公達の仇役で、フンドシ一丁のところに頭から水をかけられてキリキリ舞いさせられたりしていて、子供心に「こんなの嫌じゃないのかな…」と心配していた。

ドラマの内容は岸田森の素っ裸以外ほとんど覚えていないが、オープニングとエンディングのテーマ曲が私は大好きだった。学校のそうじの時間に雑巾がけをしながら小さい声でよく歌っていたものだ。これと前後して甲斐バンドの「漂泊者」という曲を使った「学園危機一髪」というドラマもあった。

「テレビのヒーローがくじけちゃダメだと言ってる。でも俺はイライラしながら踊るだけ。」

という屈折した歌詞が子供には新鮮だった。特撮ファンだったので、テレビのヒーローを相対化する発想はまるでなかったのである。これはこれでとてもいい曲だが、私は甲斐よしひろの声が昔から好きではなかった。そこへいくと「ピーマン白書」の「パラダイスコネクション」と「トゥモロー」は、搾り出すようなヴォーカル自体がねじれていて、切なげで、「漂泊者」をきっかけに「○○するなよ」「○○だろ」という態度の歌詞に興味を持ち出した年頃の私にはしっくりときた。それは圧倒的な存在感だった。どんな歌手なんだろうかと思っていたが、番組は打ち切りになり、あの歌声を聞くこともなくなってしまった。

ネットが発達して「パラダイスコネクション」のドーナツ盤を手に入れることができた。なんと作詞は阿久悠だった。いろいろ情報を検索するとクレジットされているオールジャパンデビルバンドというのは、この時限りの覆面バンドということらしかった。謎は残った。

時々思い出したようにしつこく検索を続けていたら、この歌手は、かつてジャニーズ事務所に所属した豊川誕だという情報にヒットした。関係者以外にとって、これはここ1、2年の間に出てきた話であるのは間違いない。「ピーマン白書」の展開が佳境に入り、盛り上がったところで「主題歌を歌っているのはあの豊川誕だった」と発表することで、今で言うシナジー効果を狙っていたらしい。ところが、ドラマの打ち切りでこの話もフイになったということのようだ。周辺情報の方が余程ドラマチックである。豊川誕は今でも歌手活動を続けているとのことだ。一度観に行ってみよう。

ちなみに「頭がピーマン」というのは中身が空だという意味の当時の流行語である。ずうとるびの新井が主演した「ピーマン'80」という映画もあった。弟が親戚のおじさんに連れて行ってもらって喜んでいたので「俺も観たい」とせがんだが、二度も足を運ぶような映画でもなかったようだ。やんわりと拒絶されてしまった。パンフレットでは、岸田森ではなく新井康弘が素っ裸で笑っていた。