ヤマオカ、ムラマツ、ロボット長官

YBN(やりちゃんブログネットワーク)のはてなダイアリーやyaplogのコメント欄には「栄庫」というハンドルネームの人物により「私は創価学会に盗聴されている」というような病的な投稿が繰り返されるようになった。いわゆる「黒太陽さまよりの毒電波」の類である。インターネットでは、おかしなものが迷い込むのはよくあることなので、削除せずに残してある。

一方、mixiの日記には「大圓」という「お客さま」が訪れるようになった。大圓さんは「日本は狙われている。GHQも、日本共産党も、日教組も、みんなみんなグルでつながっている」と主張している。文章の感じでは20代位の印象を受ける。プロライターの私のマイミクさんにまで討論を挑むのは勇敢なことだが、ほとんど対話が噛み合っていない。悪いことに大圓さんは、ネット上の資料を検索して大量に貼り付けるスタイルなので、投稿の間隔がとても長い。自分は忘れた頃にマイペースで書き込んでくるくせに、コメントの後にはしきりに足あとをつけたり、他の記事に短い投稿をしてみたり、構って欲しそうに甘えてくる。実に子供じみている。ひょとすると10代なのかもしれない。

大圓さんは、昨日の「人間の條件」に関する記事にも、「こんな映画を観るようなやつはアカだ」というような低レベルな言いがかりをつけてきた。映画に登場する悪役の古参兵の方が余程気の利いたことを言う。文章からみて大圓さんが作品を観ているとはとても思えない。一事が万事この調子で、大圓さんの書き込みは、どこからか引っ張ってきた資料の内容を理解した上での文章ではなく、ボリュームばかり大きくて内容に乏しい。彦摩呂なら「ネット投稿のメタボリックや〜ッ」と叫び声をあげるところだ。

確かに「人間の條件」には主人公・梶が、自身を社会主義者と位置付けるセリフがある。しかしながら、梶は、戦友・新城一等兵丹下一等兵によるソ連軍への投降への誘いを幾度となく拒絶している。ソ連兵の避難民への凌辱も表現されている。物分かりのいい敵軍人も登場しないことはないが、これはアメリカが相手の映画でもあることだ。ソ連軍収容所での査問シーンでは、「あんた達には一晩中かかっても足りないくらい問い質したいことがある」という内心のモノローグがあり、作品を通じて「人間性の解放」を謳うソ連邦共産党に対し、懐疑的なトーンが貫かれているといえる。終末近くには、山崎豊子の「不毛地帯」に出てきたようなアクチブが登場する。これは前にも日記に書いたが、アクチブとは進んでソ連軍に取り入って保身を図る者をいう。梶はブチキた後にアクチブ・桐原伍長をチェーンで撲殺して肥溜めに投げ入れる。そんな共産主義礼讃映画はないだろう。

映画「人間の條件」には、惜しげもなく大量のエキストラが動員され、戦闘シーンに登場する十数台もの戦車は特撮ではなく、どう見ても実物だ。後半には、岸田今日子中村玉緒高峰秀子らの単独で主役を張れる女優が、これでもか、と畳みかけるように投入される。旧日本軍の抱えていたマイナス面が微塵でも表現されているか、否か、を第一の価値観に据える人以外にとっては観応えのある作品であり、自信をもってお勧めできる。

ウルトラ者的視点で言えば、ヤマオカ長官、ムラマツ・キャップ役の藤田進、小林昭二が重要な役で出演している。藤田は二等兵、小林は少尉と階級が逆転しているところがおもしろい。道を尋ねられた朝鮮人役でロボット長官こと成瀬昌彦も顔を見せてくれる。