老夫婦

電車の中で、大きな荷物を抱えた老夫婦が口論をしていた。言い合いというほどでもなく、

「関係ない、もう一切関係ないからな。」
「家に着いてからにして。」

というやり取りが、間を空けて散発的に繰り返されるだけ。お互いに静かで深い憎悪を感じた。きっかけは小さなことでも「この人はいつもそうなんだ」という長い間の年輪が、思わず振り返られずにはいられないような鋭い怒気を生み出すのだろう。

「男と女の間には深くて暗い川がある」という歌を思い出した。「マリリン・モンロー・ノーリターン」もよろしくね。