おふくろの味

私の両親の結婚はどちらかと言うと急な話だったらしい。母親は、いわゆる花嫁修業というものとは無縁だった。料理は結婚してから覚えたと聞いている。味噌汁の味は祖母や曾祖母のものとはまるで違っていた。私にとっておふくろの味とは、鶏の唐揚げやシチュー、ポテトサラダなどである。私に対して手料理で攻勢をかけようとしている女性やゲイのみなさんは、私の好物がポテトサラダであることに留意されたい。

本日のランチは北海道産シャケのクリームコロッケ定食だった。添え物のポテトサラダを頬張ったところ、予測された歯ごたえがまるでなく、明らかに異質な味がした。賞味期限の偽装や食の安全にまつわる一連の不祥事が頭の中を駆け巡った。

「なんだよ、コレ」

よく見てみると、それはタルタルソースだった…。勝手にポテトサラダと思い込んでいた私も悪いが、だとすれば、小さな器に入っていた普通のソースは一体何だったというのか。オプションで好きな方を選べ、というのなら、二つ並べておいてくれてもよさそうなものだ。両者はおぼんの手前と反対側に離して配膳されていたのだ。おふくろの味への憧憬を踏みにじられた気がして店を後にした。