餃子と米兵、ルパン対ホームズ

伝統的に左翼勢力は警察機構を嫌悪する。誤認逮捕、冤罪はあってはならないことだが、警察機構が批判されている場合には、背後に治安の液状化現象が目的とされているか、否かを疑ってみる必要がある。女子中学生に手を出して逮捕された米兵は容疑を否認していたが、

「容疑が確定するまでは不用意な発言は控えるべきだ」
「本人がやっていないと言う以上冤罪の可能性がある」

と主張する左翼はおらず、一貫した態度とは言えないのではないか。また、冷凍食品の餃子では見事に左右が逆転しており興味深い。

これらの問題の観測には幾つかの段階がある。一つ目は、

【イ】
「たまたま素行の悪い米兵がいて、女子中学生に手を出した」
「たまたま不心得な工員がいて、餃子に毒を入れた」

と考える段階である。不祥事が続くと、二つ目の段階として、

【ロ】
「辺境任務の軍人は概してモラルが低いものだ」
「中国では貧富の格差が拡大しており、食品輸入は常にリスクを孕んでいる」

などと考えるようになる。最終的には、

【ハ】
在日米軍など国外退去させろ」
「中国の食品など購入するな」

という域にまで到達することだろう。これは概ねの世論とは隔たりがあるので、【ロ】と【ハ】の間の段階で、

「政府として米軍に申し入れを行う」
「受け入れ側の検査機能を高める」

などの対策が検討されることになる。これらを全く無駄である、などということは言わないが、現実問題、米兵の狼藉や中国産食品の汚染は今に始まったことではなく何度も繰り返されてきた。

子供のころ「ルパン対ホームズ」という本を興奮しながら読んだ。その中に「神出鬼没、いつでも好きな時にチャンスを窺がうルパンの方が圧倒的に有利だ」というようなセリフがあった。一部の不穏分子の為にまともな米兵や工員の行動が規制され、検査機能強化の為のコスト負担をユーザー側が強いられるのは何とも理不尽な話だ。外国人が相手なので障害があるのだろうが、子供に手を出したり、食物に毒を盛ることはとても割に合わない、と思わせるほどに罰則を強化することを諸対策に加えるべきではないだろうか。犯行に及ぼうとする者に直接訴えるものがなければ効果は期待できない。薬害や建築偽装、食品偽装などのチェック機能、責任の全てを政府に要求しようとすると、多種多様な監督官庁の肥大化を招く。一方、諸問題の罰則強化には一定の効果が期待できるのに対し、必要とするのは監獄の拡充くらいではないだろうか。

「ルパン対ホームズ」については記憶が曖昧で、もしかしたら怪人二十面相と混同しているかもしれない。版権の関係でワトソン氏が登場できず、代わりにウィルソン氏という新キャラクターが助手を務めた、というようなどうでもいいことはよく覚えているのに…。ドイル側も意外と狭量だ。