草莽崛起が聞いて呆れる

イージス艦と漁船の衝突事故についてはネット上にも様々な評論が溢れているが、これは極め付けだろう、というものをある保守系のブログで見つけた。

イージス艦の事故を無駄にしないために
http://prideofjapan.blog10.fc2.com/blog-entry-1311.html#more

この記事には、

・今般の衝突は交通事故だ。
・衝突を回避しなかった漁船が悪い。
・外国であれば公務執行妨害になるだろう。いちいち避けていられるか。
・テロリストが漁船を装えばイージス艦は一たまりもない。

とある。

筆者の松木という人物は、この事故が反自衛隊運動に利用されている、と憂いている。日経と読売の記事を連日読んでいたが、反自衛隊運動と感じるような記述は無かった。最新鋭のイージス艦はいかにも頑丈そうであり、仲が良かったとされる漁師父子に同情が集まるのは日本人のメンタリティに照らせば、ごく自然な流れではないのか。当の自衛官ですら「漁船が悪い」「避けていられるか」などとは夢にも思うまい。海上自衛官は就寝前に以下の言葉で自らを省みるそうだ。

一、至誠にもとるなかりしか
一、言行に恥ずるなかりしか
一、気力に欠くるなかりしか
一、努力に憾みなかりしか
一、不精にわたるなかりしか

大臣の謝意は被害者の親族や漁協職員に伝わり、「政局にはしないでくれ」という言葉も出たようだ。皆が辛い思いに耐えながら日本人の作法で事が進みつつある。松木何某の開き直りのような言い草は、世論とも、自衛官の心情とも、著しくかけ離れているのではないだろうか。公務執行妨害とは、物は言いようだ。敵機襲来を受け出撃中であった、というのならわからなくもないが、護衛艦あたごはハワイでの演習を終え、横須賀基地へ帰投中だったのである。

このブログのタイトルは「草莽崛起」という。そこ、ここに繁茂した草がすっくと立っているさまを表す言葉だそうだ。テーマは日本人の誇りだ。どちらとも松木何某の記事には不似合いに思えてならない。

雑草を意味する「あらぐさ」という言葉がある。私の以前の職場には大多数の職員が加入する従業員組合の他に、日本共産党の影響下にある産業別組合というものがあった。そこの組合員が時々配っていたプリントの名前が「あらぐさ」だった。どうやら日本共産党はこの「あらぐさ」という言葉が気に入っているらしく、これを冠した機関誌や団体が無数にある。勝手な想像になるが、「我々は今でこそ雑草として踏みつけられ、蔑まれているが、この逞しく瑞々しい生命力で打ち克ってめせる」という気概を示しているのではないだろうか。ヒダリの方々にとって、この「今でこそ○○であるが」という前置きはとても重要なものだ。格差社会だ、対米隷属だ、という状況説明が厳しい内容であるほどに「我らが日本共産党が局面を打開します」というメッセージが輝きを増すのである。ルサンチマンをテコに利用するのはヒダリの方々の伝統的手法である。松木何某の記事には、自衛隊への不当な扱いに関する恨みつらみが先に記した要旨の後に延々と続く。これもまた勝手な想像だが、この
筆者は「我々覚醒した一握りの憂国の志士が、平和ボケの日本を叩き起こします」と結びたかったのではあるまいか。

左翼化するミギ言論を見つめている当ブログより、松木何某に「第一回あらぐさ賞」を授けたい。

社民党躍進を祈るブログ」には松木何某とそっくりな内容の記事がある。こちらの方が日付は古いようだ…。

イージス艦は魚雷に弱い!
http://blog.goo.ne.jp/sdpj_2007/e/52676c5849fdfcae118b0bed7bc14ce0

お二人とも世紀の大発見のように書いているが、「スターウォーズ(1作目)」や「宇宙からのメッセージ」で育った子供たちは、巨大兵器に盲点がつきものであることをよく知っているし、ギリシャ神話には英雄アキレスが登場する。イージス艦は従前より弱点を認知し、これを補う方法をシステム化していたが、その運用が万全でなかった為、事故につながったというのが有り体の観測ではないのか。「ぶつかる方が悪い」というが如き暴論は後出しもいいところであり、他ならぬ海上自衛隊をも愚弄するものだ。

公務執行妨害だよ、広義の。