米島勉日記にあらぐさ賞

こういうのを作用・反作用の法則というのか、振り子の原理というのかわからないが、「軍艦がいちいち漁船を避けていられるか」というオピニオンは想像以上にネット上に乱繁殖しているようだ。保守言論の左翼化を見つめる当ブログより、「第二回あらぐさ賞」を米島勉日記の以下の記事に授けることにする。このペースでいくと年末あたりには「あらぐさグランプリ大賞2008」の選考会を開催できるかもしれない…。

船は急には止まれない―1000:1の運動量
http://blog.goo.ne.jp/daijishoji/e/06be539c7bab3141c1f9c002d4f019f7

米島勉さんは理工系の大学院で博士課程を修了されている方なのだそうなので、前段の「船は急には止まれない」という考察は高度な専門知識に裏打ちされたものなのだろう。しかしながら、これをもって「軍艦が漁船を避けていられるか」の論拠とはならないことは明白だ。中高生時代の私でも首をかしげることだろう。先日の日記にも書いたが、護衛艦あたごはハワイの演習を終えて横須賀の基地へ帰投中だった。朝鮮人の襲撃と比較して論じるのはナンセンスの極みだ。平成20年の平均的な日本人の認識は、夏休みの副教材に「じえいたいのばか」という詩を載せることを見過ごしていた時代とはまるで違い、自衛隊の重要性を認め、数々のPKO活動を高く評価している。それだから今般のような不祥事が歯痒いのである。米島翁のような稚拙な論理構成で日本人に安保論を説こうとでも思うのなら、それは釈迦に説法というものだ。

以前、マイミクシィ、ぞのたろうさんがコメント欄に、「政治の話をしていると、自分が大きくなったように錯覚をしてしまう」という大切な指摘をして下さった。

1.大きな船は止まりにくい
2.朝鮮人が攻めてきたら一大事だ
3.軍艦が漁船をいちいち避けていられるか

博士課程修了者に敬意を表し、1.を真実と認めよう。2.については直ちに自衛隊の勝利で決着がつくと思うが、一大事であることは認めよう。1.と2.を所与の真理としても、そこから3.を導くには相当な無理がある。中学生でも理解できることだが、ここに、ぞのたろうさんの指摘してくれた「政治話マジック」がはたらいている。「大きすぎるウソはバレにくい」というのはマーフィーの法則だっただろうか。

敬愛するマイミクシィ、カブゴンさんの「政治家はお猿の電車の猿」論を私は支持しているが、これは「政治家なんてバカばっかり」という意味ではない。社会には、政治、経済、文化の柱があり、ひとり政治の力のみを必要以上に過大評価するべきではない、という意味に私は受け止めている。蝶が舞い、蜂が刺すような非の打ちどころのない人物によるものであることを政治の必要十分条件とするならば、我々はそのような人物の登場を数百年かけて待たなければならないかもしれない。そのような社会のあり方は間違ってはいないか。普通の人間にこなせる程度以上の仕事を政治に任せるべきではない、と私は思う。戦後の日本に、土光敏夫盛田昭夫小倉昌男丹羽宇一郎と肩を並べられる政治家がいただろうか、いるだろうか。私は、彼らが政治家でなくて日本の国にとって本当によかった、と心から思っている。靖国の英霊にもそのように報告している。