貸し渋り監視

銀行というのも因果な商売である。「銀行は担保が無ければ金を貸さない」とよく言われるが、バブル期以降「銀行が担保も取らずに金を貸し込んだ」という批判をよく耳にした。前記の人に言わせれば、神様みたいな銀行員じゃないか。青年やりちゃんは、実にバカバカしいと常々思っていた。

金融庁貸し渋り監視を強化するのだという。社用車で移動中、ラジオの国会中継公明党松あきら議員が「貸し渋りは絶対にイケマセン」と吠え立てていた。中年やりちゃんは、世の中変わってないな〜、と呆れ返っている。銀行の皆さん、貸し渋り大いに結構、独自の審査規準を貫き通しすべきである。無理な貸し出しをしたところで、どうせ後から「サブプライム金融禍時のズサンな銀行融資が後に不良債権化した」などと梯子を外されるのは目に見えている。

中小企業の資金繰りはどのようなものだろうか。大都市を除けば都市銀行の店舗網は意外と粗いものだ。いわゆる中小零細企業地方銀行と融資取引をしているところは多い。企業の規模に応じて、信用金庫、信用組合というように取引金融機関も小振りになっていく。金融機関は、企業が売り上げ金などをプールしている預金へ支払う金利と、貸し出し金で受け取る金利などを勘案し、採算管理している。例えば年利3%で2,000万円を借りている企業が普通預金に平均1,000万円をプールしていたとすると、その企業は事実上、1,000万円を6%で借りているのと同じになる。厳密には、極僅かな普通預金の利息を控除しなくてはならないが、このような状態を「実質金利6%」と言ったりする。小規模な企業が、追加の融資や金利の引き下げを求める為には、メインバンクに預金取引を集中させると交渉が有利になる。これによりメインバンクも業況が把握し易くなる。反面、メイン銀行が追加融資に応じない場合に、企業が他の銀行に話を持ち込んでも「メイン
で断られたのだろうな」と警戒されてしまうものだ。

貸し渋りだとされる案件には、限界ギリギリまで借りた上での際どい話も多いのではないだろうか。金融機関とて好き好んで取引先企業を破綻させるとは考えにくい。企業が倒産した場合、銀行には他の一般債権者に優先して貸し出し金に預金を相殺することが認められている。

マイミクシィのカブゴンさんから日銀の量的緩和でダブついた資金は企業融資に向かわず、米国の住宅バブルの遠因となったと教えて頂いた。しばらく後になって、野口悠紀雄や榊原英輔が同様の指摘をしているのを目にするようになった。今後もカブゴンさんに大注目である。

国会や日銀が何かをしたからといって魔法のように経済が好転するのなら誰も苦労などしない。彼らの一挙手一投足を追うよりも、経済そのものに皆で注目して、一体何が起きているのかを見極めるべきだ。誰かが面白いアイディアを思い付くかもしれない。政治は、森羅万象を本質とは無縁な権力闘争へと歪める。