悩み多き者よ

斉藤哲夫が初のセルフカバーアルバムを最近出したらしい。代表曲の「悩み多き者よ」はとても好きな曲だ。学生の頃、叔父に初めて聴かせて貰った時には大きな衝撃を受けたものだ。10年程前にフジテレビのドキュメンタリー番組でこの曲が効果的に使用されていた。「平成金の卵」というタイトルで、中学卒業後に割烹へ集団就職する少年少女を描いたものだった。思いがけない場所で古い友達にあった気がした。

好きな曲なので、今話題の動画サイトでも検索してみた。最近のものらしい演奏を観ることができた。いい具合に力が抜けていて、これはこれでとてもいいな、と思っていた矢先にカバーアルバムの話が届いた。神に感謝しよう。

やはり10年くらい前、埼玉で野外のフォークイベントがあった。遠藤賢司目当てで行ってみたら、斉藤哲夫も出て来た。小肥りのおじさんな外見とセンシティブな美声とのギャップが大き過ぎて、とても不安定な気持ちにさせられた。トラックの運転手をしながら活動を続けているとのことだった。以降それほど気にかけていなくとも、情報の途切れることはない。一定の支持層があるのだろう。日本人の耳は確かなのだ、と感じる。もちろん本人の心意気も素晴らしい。

一方、ブルース・スプリングスティーンの新譜も来月発売になるようだ。昼間のラジオで二曲紹介されていた。これは相当なものだ。メロディが頭に残って、くるくるまわり続けている。なにかと物入りになってきた。DVDを同梱した豪華版もあるようだが、それはいらないなぁ。むしろAMラジオ風に音質を下げたものが欲しいくらいだ。

テレビがつまらないとか、偏っているとか言う人が多いが、ラジオを聴けばいいのに、と思う。ニクソンケネディの演説が、ラジオとテレビでは違って聞こえた、という話が私は大好きだ。早朝の宗教番組群は決して強引な寄附を求めない。ニッポン放送系列の人生相談は、しばしばサスペンスドラマよりもスリリングな展開をみせる。毒蝮の街頭番組は、人間不信の解消にかなりの効果がある。しつこいようだが、オープニングのあのパーカッションは神業だ。演奏者の名前が知りたい。ミッキー安川の政治番組は、ビートたけしのそれが学芸会に思えるほど無鉄砲だ。FENのカウントダウンが無かったら、フレンテ!という不思議なバンドと出会えなかった。「五木寛之の夜」はそう遠くない将来に復活するのではないかと期待しているが、先日亡くなった牟田悌三の税金番組を聴くことはもう出来なくなってしまった。あのいかにも台本を読んでいるという感じが味わい深かった。