ニューラリーメ

少年やりちゃんは自ら行動半径を広げようとはしない子供だった。次々とコインを飲み込むアーケードゲームには、もったいない気がして手を出さなかった。これは現在のパチンコ嫌いの源流にもなっている。そもそも、上手になれば少ないコインで長く遊べるじゃないか、という発想がなかった。そんな私でも幼なじみの内村くんや境くんの得意なニューラリーXというレースゲームは大好きだった。一度聴いたら耳を離れないコミカルなテーマ音楽で、これだけでも金を払う価値がある。ここぞという時に煙幕を張って敵対車輌を撃退するというギミックもたまらない魅力だった。仲良しグループで屋上ゲームコーナー等に遊びに行くと、内村くんや境くんに、「これやってよ、これ」とニューラリーXを奨めて横で見ているという、今思えばかなり貧乏たらしい子供だった。内村くんや境くんはそんな私を厭わず、音楽に合わせて「屁ごまかしったら、屁ごまかし」と歌いながらゲームを見事なボタンさばきをみせてくれた。煙幕を張るところが敵にオナラをかけるように見えるの
である。

現在、ニューラリーXはパソコン用のソフトとして、定価二千円で市販されている。最近私はこれをネットオークションで11円で落札した。子供の頃に一回毎に百円かかったことがウソのようだ。二百五十円の新古ゲームパッドまで買い揃えてしまった。娘はこれを「ニューラリーメ」と呼んでかなり気に入っている。「氷の星のニューラリーメ」とか松本零士のマンガに出てきそうな感じ。