アトラス塩浜の誤解

敬愛するマイミクシィにして平和活動家のアトラス塩浜選手が「塩浜オタク党」という架空の政党の模擬マニュフェストを発表した。実に興味深い企画だが、一つ目の政策が明らかな事実誤認に立脚しているので全く評価できない。聡明な彼らしくもないことである。

http://yaplog.jp/sekairenpou/archive/1232

「2011年に予定されているアナログ放送停止を撤回します。」

というのがその政策だ。対応機器の普及が遅れていて時期尚早だ、というのならわからなくもないが、アトラス選手はその根拠を、デジタル放送化は金持ちや暇人の勝手な贅沢で、その為に一般庶民に犠牲を強いるのは理不尽だ、としている。これは「きっこの日記」程度のお粗末な見識ではないのか。実に残念なことだ。

日常パソコンを利用している人なら、同じ時間分の音声ファイルよりも動画ファイルの方が何倍もサイズが大きいことを知っているだろう。現状の地上アナログテレビ放送は、音声と映像を伝える為に、限られた公共の電波のとてつもなく多くの部分を占有している。ところが、テクノロジーの発達により、携帯電話やら、自動ドアやら、テレビ・エアコン等のリモコンやら、カーナビなどなど、様々なものに電波が使用されるようになり、空いている電波が足りなくなってしまいそうになった。それならば、テレビ放送をデジタル化してダイエットすれば、驚くほど大きな空きができて、限りある電波がみんなで有効活用できるではないか、という実に前向きな話なのである。アトラス選手が自説の論拠としている「多機能化、双方向化など贅沢で不要不急なり」という部分は、枝葉末節のどうでもいいオマケのようなもので、デジタル化の本質・根幹から目を背けている。おかしなことを吹き込む人がたまたま周りにいたのだろうが、政策として掲げるのであれば、よくよく自分自身で吟味して
しかるべきだ。

地デジ化で空いた電波が、自動車の自律制御システムに使用できる、という期待もある。鉄道では、前の列車が詰まっていると自動的に停止するシステムが整備されているが、その自動車版のようなものらしい。交通事故を減らすことができるかもしれない。子供の頃に地元警察が発行した「ただくやしいだけ」という交通遺児による文集を読んだ。暗くて重い気持ちになる文集だった。おじさんになった今でも強く記憶に残っている。塩浜オタク党は地デジ化推進を第一に掲げるべきである。これは国民総体の福祉に資するものであると私は確信する。

排気ガスの規制が強化されると、それに対応した新車が発売されたり、既存車両にアタッチメントを装着したりする。地デジ化もそのようなイメージで捉えるべきものだろう。大型テレビの宣伝が盛んなので、地デジは金持ちの贅沢であるかのような印象を受けるのかもしれないが、メトロン星人の住む木造アパートに似合いそうな14型くらいの小型機種もちゃんと発売されている。既存のブラウン管テレビ用のチューナーも売っている。今すぐにこれらを大プッシュしてしまうと景気に影響が出てしまうかもしれないが、停波を前にしたどこかで政府は舵を切らなくてはいけないだろう。